足関節捻挫

 1 足関節捻挫 とは

捻挫の中で足関節捻挫はもっとも多く見られる捻挫で、スポーツだけでなく日常生活でも起こりうる頻度の高いケガです。

足関節は2足歩行である人間の弱点となっている部位の一つです。

ここではランナーを例にとってご説明します。

特に不整地を走るトレイルランナーや、スピード練習を取り入れている方は要注意です。

スポーツ傷害の中で足関節捻挫は、国内では全体の約14〜17%を占めるとされており、他国の報告では20〜40%との幅広いデータもあります。その頻度の高さからも、正しい知識と対処が重要です。

足関節は、脛骨(けいこつ)・腓骨(ひこつ)・距骨(きょこつ)から構成されており、複雑かつ繊細な構造をしています。この関節を安定させているのが「靭帯」です。

足捻挫の中で圧倒的に多いのは「足関節の内反捻挫」と呼ばれる、足首が内側にひねられるタイプです。これにより、足首の外側の靭帯が引き伸ばされ、損傷します。

2 解剖学的にみた足関節と捻挫しやすい靭帯

足関節には複数の靭帯がありますが、捻挫で最も損傷を受けやすいのが、足首の外側の靭帯です。

この靭帯は以下の3つから構成されます。

① 前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)

最も頻繁に損傷される靭帯。軽度〜中度の捻挫で断裂しやすい。

② 踵腓靭帯(しょうひじんたい)

重度の捻挫で損傷されることが多い。

③ 後距腓靭帯(こうきょひじんたい)

損傷することは少ない。

また、捻挫の際には靭帯だけでなく、関節包、腱、周囲の筋肉にも炎症や損傷が起こることがあります。

ランナーは、着地の瞬間に非常に大きな力(体重の2〜3倍)を足関節にかけています。特に疲労の蓄積や、地面の傾き、路面の不安定さが加わると、靭帯が一瞬で耐えきれなくなることがあります。

 3 捻挫の重症度と一般的な対処法

捻挫は程度によって以下の3段階に分類されます。

① Ⅰ度捻挫:靭帯が軽く伸びた状態。腫れや痛みは軽度。

② Ⅱ度捻挫:靭帯の部分断裂。歩行に支障が出ることもある。

③ Ⅲ度捻挫:靭帯の完全断裂。関節の不安定性が顕著で、手術が必要な場合もある。

捻挫した直後はRICE(REST,ICING,COMPRESSION,ELEVATION)のアプローチが有効です。

これらは、発症から48時間以内に徹底することで腫れ・炎症を最小限に抑え、回復を早めることができます。

捻挫が疑われる場合には軽度の損傷でも整骨院へ、整骨院で精査が必要と判断された場合は整形外科での診察が必須で、画像診断(エコーやMRI)によって損傷度合いを確認し、的確な治療方針を立てる必要があります。

軽度の捻挫でも放っておくと慢性的な関節の不安定性や、将来的な変形性関節症のリスクが高まります。

4 ランナーに必要なセルフケアとリハビリのポイント

足関節捻挫を経験したランナーが、再発を防ぎながら競技復帰を目指すには、段階的なリハビリと日常的なセルフケアが不可欠です。

① バランストレーニング

捻挫後は固有感覚(位置や動きを感じる力)が低下しやすくなります。片足立ちやバランスボードを使ったエクササイズは、足首の安定性を高め、再発防止に効果的です。

初めは竹踏みなどから始めて足底の感覚を向上させていきます。

トレーニングに慣れてきたら目を閉じての片足立ちなど難易度を高めます。

② 足関節の可動域改善

足首周囲の筋・腱が硬くなると、再び同じ動作で捻挫しやすくなります。タオルギャザーやアキレス腱のストレッチ、ゴムバンドを使ったトレーニングを取り入れましょう。

③ テーピング、サポーターの活用

競技復帰初期にはテーピングや足関節用のサポーターで外部からの安定性を補強するのが効果的です。ただし、テーピングやサポーターに頼りすぎず、最終的には「自分の筋肉で支えられる足首」に戻すことが大切です。

5 再発予防と長く走り続けるための工夫

一度足関節を捻挫すると、再発率は30〜70%にのぼるとされており、適切な予防策が重要です。

以下の3つは、ランナーにとって再発予防の基本となります。

① 靴の見直し

ランニング初心者は特に注意が必要です。

かかとがしっかりと固定される設計か。ソールがすり減っていないか。

定期的にチェックが必要です。

② 走る環境の選択

トレイルや段差のある道では慎重に。暗い時間帯のランニングは特にリスクが高いです。意外かも知れませんが街中を走ることが多いランナーは側溝の傾斜にも注意が必要です。

③ フォームの改善

着地のブレや足首の不安定な動きをチェックするため、動画撮影や専門家の指導を受けることも有効です。

また、足〜膝の筋力バランスの乱れも、足関節への負担を増やす要因です。特に腓骨筋群、後脛骨筋、足底筋群の強化は、足首のコントロール力を高め、再発予防には効果的です。

6 当院での実際の施術法

① テーピング

足関節捻挫の症状、経過時間などを判断して固定力の強いホワイトテープか固定力の弱めのキネシオテープで処置をする場合があります。

② 鍼

足関節捻挫での鍼治療は急性期と慢性期では治療方針が変わってきます。

・ 急性期

捻挫直後重症の場合には腫れなどの炎症強く現れます。

患部周辺の腫れを軽減する目的で鍼施術を行います。

具体的には損傷した周辺に症状に応じ、鍼の単刺(鍼を行いすぐに抜くを繰り返す)、鍼通電療法などを行います。

・慢性期

急性期に続き損傷部位の周囲に鍼を行い、血流量を増加させ治癒を促進させます。

捻挫後は固定などの影響もあり足関節をコントロールする腓骨筋などの機能が低下している可能性があるため、鍼によって筋肉を刺激していきます。

具体的には腓骨筋などに鍼通電療法を行います。

筋肉を直接動かすことで捻挫予防に重要な筋肉の機能を回復させます。

③ マッサージ

捻挫後、足首の炎症も消えて組織が回復しているのにも関わらず、痛み残存したり慢性浮腫といって腫れが残存する場合があります。

そのような場合は、関節周囲をマッサージするだけでなく、足を挫いた際に長腓骨筋なども痛めていてトリガーポイントになってしまっていることも考えられるので、負傷部位以外の筋肉にもアプローチます。

トリガーポイントとは名の通り痛みの引き金(トリガー)となっているポイントで痛みの原因となっている部位の事です。

特徴としては以下のようなものが挙げられます。

・ロープ状に固くなっているポイントがある

・押すと悩んでいる部位の痛みが再現される

・押されるとかなり痛い。人によっては心地よい

などがあります。

トリガーポイントは筋肉や筋膜の一部が硬くなってしまっている為、血流の低下や痛覚過敏を引き起こし、慢性的な痛みの原因となってしまいます。

そのため、捻挫後の痛みが取りきれない場合には腓骨筋のトリガーポイント(下図参照)に対して鍼や手技療法を行なっていきます。

④ 干渉波治療

負傷部位や関連する筋肉に干渉波をあて血流をよくして痛みの改善を図ります。

⑤ 超音波治療

炎症が消退したあとは、腫れを引かせたり、損傷部位の快復を促したりします。

⑥ ストレッチ指導

足首の捻挫の予防にはふくらはぎ周囲の筋肉の柔軟性が重要です。

後脛骨筋や足の指を曲げる筋肉が硬くなっていると足首が内側に捻りやすくなってしまうため、ストレッチを行い、後脛骨筋筋や足の指を曲げる筋肉などの柔軟性を確保する事が重要です。

⑦ セルフケア指導

1日でも早く回復しランニングを楽しんでいただくために当院ではセルフケアの指導も行なっています

捻挫予防のために必要なセルフマッサージやストレッチの指導、ランニング経験豊富なスタッフによるフォーム指導などを行います。

当院では丁寧に問診を行い、症状の改善のために必要なポイントをお伝えし、続けやすく効果的なセルフケアをお伝えしています。

7 まとめ

足関節捻挫は軽視されがちですが、今の状態を放置したり誤った処置によって「クセになる」ことも多いケガです。

ランナーとして長く走り続けるためには、解剖学的な理解と早期の対応、継続的なセルフケアが重要です。

足首を捻挫してしまった場合は、自己判断せず鍼灸整骨院や医療機関で適切なサポートを受けてください。

山王鍼灸整骨院でも、足関節捻挫に対する施術や再発予防指導まで、丁寧にサポートしております。

お困りの際は、大森駅徒歩4分 大森山王地区に根差して23年の山王鍼灸整骨院にお気軽にご相談ください。

山王鍼灸整骨院代表 田中聡

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